富山県の鮮新統頭川層から産出したエゾキンチャク属 (二枚貝:イタヤガイ科)の新種について(慶應義塾高等学校 吉村太郎)
要約
本論は, 著者が富山県高岡市の鮮新統頭川層より発掘したイタヤガイ科二枚貝 Swiftopecten djoserus (Yoshimura, 2017)を未記載の新種として, 慶應義塾高等学校在学中に執筆し, 受理された英論文である. 本新種は,44 産地 390 個体の標本を対象とした形態解析を通じ, Swiftopecten 属の模式種である S. swiftii との間に統計的に有意の差が認められ, 本研究は本属では日本で2種目の別種として新種と結論付けた. 本新種は主に以下の点で固有の形態的特徴を有する(1)細肋(貝殻の蝶番から放射状に伸びる細かい筋)の本数が 44-46 本である(2)成長肋(年輪のように見える同心円状の尾根)が顕著に発達している(3)殻頂角(貝殻の両端と蝶番を結ぶ角度)がやや大きい(4)イタヤガイ科(ホタテガイの仲間)では個体のサイズが小さい. 本論では, 貝類では極めて特異な殻成長である, 階段状の成長肋を本新種の大きな特徴と捉え, 新種名は“階段”ピラミッドの典型であるエジプト・サッカラにあるジョセル王のピラミッドに由来し, 献名している. この階段状の成長肋に関しては, 本属の模式種である S. swiftii のおよそ2倍の凹凸を示すことから, 同所的に産出した S. swiftii とは生殖活動の周期が大幅に異なることを示唆していると考えられる. 本研究に於いては, 国内外より産する Swiftopecten 属および近縁種の化石・現生個体の検討を試みたが, S. djoserus sp. nov.は富山県高岡市の頭川層上部以外に産出が認められないことから, 本新種は日本海中部沿岸域に局所的に生息した固有種であり, 大桑—万願寺動物群に属する日本海形成時期の鮮新世末期における絶滅種であると考えられる.
YOSHIMURA, T., 2017. A new Pliocene species of Swiftopecten (Bivalvia: Pectinidae) from the Zukawa Formation in Toyama Prefecture, Central Japan. Paleontological Research, 21 (3): 293-303.
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吉村 太郎 プロフィール
1998年福井県生まれ。2014年、国立福井大学教育地域科学部附属中学校卒業。2017年慶應義塾高等学校卒業。現在は慶應義塾大学経済学部1年生。大学では経済学部での勉強をする傍ら、生物学の研究や法律の勉強に取り組む。研究活動では、新種の二枚貝化石の発見・論文執筆。貝類の殻形態の雌雄差に関する研究では、WCM2016(国際軟体動物学会総会)にて日本人初、最年少での最優秀賞受賞を果たした。平成28年度慶應義塾塾長賞 受賞。
慶應義塾高等学校同窓会第68期年度幹事、国際軟体動物学会 学会員、福井国体空手道競技 強化指定選手、慶應義塾大学福沢諭吉研究会 代表。
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