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御成門新報公式サイトオープン

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近代から現代に至るまで、人類社会の発展を支えてきたのは科学技術の発展でしたが、その基礎は 17世紀にデカルト•ニュートンによって確立された近代合理主義に立脚した近代科学の上に基づいています。それは「機械的世界観」と「要素還元主義」を柱とする思考の枠組み(以下パラダイム)で成立している学問です。機械的世界観とは「世界がいかに複雑に見えようとも結局は一つの巨大な機械である」という捉え方を指します。要素還元主義とは「人間が何かを認識する時にその対象を単純な部分の要素に分類•分割し、その分類した要素を詳しく調べ、問題があればその部分を修復し再び元の形に戻せば良い」という捉え方です。この2つのパラダイムは世界が農業化から工業化へ変化していく中で「無ければ造るしつくれば売れる」という状況の中、恐るべき切れ味をみせました。

 ところが、この 2つのパラダイムは今、息切れを起こしています。それは機械的世界観においては「全体を部分に分割する都度、全体に内に含まれる大事な何かが失われていく」、要素還元主義においては「重要でないと考えられる要素は捨て去っていく事にならざるを得ず、何が重要で何が重要でないかの判断は当事者が所有する思考の枠組みによって独断的に決められてしまう」という各々の限界点が見え始めているからなのです。つまりこれらは 2項対立の思考、分離分割の思考とも言え、主観と客観や全体と部分をそれぞれ対照的に分析的に捉えてその反対の一方を捨て去るという思考形式では現代事象が捉えられなくなってきた事を指すのです。

 しかし、よく考えてみるとみるとこれらのパラダイムは近代に発生したものです。そしてその近代のパラダイムという眼鏡をかけて現代を理解する事自体に無理があるのではと私たちは考えました。

 そこで私たちは かつての偉大な先人達のように、メディア運営を通して現代にふさわしいパラダイムを「独立不覊、不偏不党、官民調和」に基き、知足利他の視座で読者の皆様と創成していきたいと考えるに至ったのです。
御成門新報は読者と共に現代そして未来へのパラダイムを紡いでいくオープンエンドのインターネットメディアを目指し歩んで参りたいと考えています。

■世界のシネマ散歩Vol4『告発のとき』 (原題)IN THE VALLEY OF ELAH

【ストーリー】

2004年イラク戦争から帰還した息子が基地から失踪した。退役軍人の父は帰宅を楽しみにしていた息子の失踪に疑問をもち無断離隊の汚名を晴らすべく独り基地の街に捜しに出かける。しかし地元の女性刑事の助けを得て見つかった息子は無残な姿になっていた。

イラク従軍時や帰還後の息子に何が起こったのか、悲しみを乗り越え真相究明のため捜索に奔走する父に、戦争帰りの若者達が病むアメリカの現実が覆いかぶさる。

 

【ビューポイント】

筆者には、この人の脚本、監督作品なら必ず映画館に駆けつけるという何人かの映画人がいる。ポール・ハギスもその中の1人だ。『ミリオンダラー・ベイビー』の脚本でいきなりアカデミー賞にノミネートされたと思ったら、翌年には『クラッシュ』で作品賞を取った。C・イーストウッド監督の『父親たちの星条旗』『硫黄島の手紙』でも脚本、原案を担っていたこの人の扱うテーマはC・イーストウッドとも重なる人種差別問題が多い。

 

本作は、2-3年前にアメリカで量産されたイラク戦争反省映画のなかでは珠玉の作品であり、戦争で精神を病んだ帰還兵達の実話である。主演の父親マイク役には、日本で缶コーヒーを飲むとぼけた宇宙人だが、ハーバード大卒でアイビーリーグMVPの秀才、トミー・リー・ジョーンズ。去年のアカデミー作品『ノーカントリー』では殺人鬼を追い詰める老保安官役も上手かった。捜索を手伝う地元警察のシングルマザー刑事にアカデミー女優シャーリーズ・セロン、そして息子の帰宅を静かに家で待つ夫人役に、同じくアカデミー女優のスーザン・サランドンと素晴らしい役者が揃った。

 

話は息子の失踪を知らせる軍からの電話で始まる。息子は祖国のために秩序ある軍隊生活をおくっていたと信じる父親には、数日前の息子のイラクからの焦燥した声の意味がわからなかった。この父親、旅先でもズボンのしわをベッドの角を使って伸ばし、ビシビシと自分でベッドメーキングする姿が規律正しい退役軍人として印象的だ。しかし捜査をするうちにPTSDが巣食うアメリカの帰還兵の心の闇と荒れた基地の街を目のあたりにして落胆していく父親の心をこの監督は丁寧に描いていく。

 

象徴的なシーンがある。行きがけの道路脇でヒスパニック系住民が掲げた逆さまの星条旗を、この揚げ方は救いを求める合図だと正しく揚げ直した父親が、真相を知った後に、息子が戦場から送り返した家宝の汚れた星条旗をわざと逆さまにして掲げる場面だ。最愛の息子を2人も失い、アメリカが陥った泥沼の中で救いを求める退役軍人の姿が痛々しい。

 

前回『ナイロビの蜂』は珍しく的を射た秀逸な邦題と書いたが、今回は残念ながらまたダメダメの代表作だ。原題『IN THE VALLEY OF ELAH』は旧約聖書やコーランに詳しい方ならお分かりだろうが聖人ダヴィデが巨人ゴリアテに立ち向かう戦場『エラの谷』からきている。そこで聖人ダヴィデは勇敢にも鎧もまとわず巨人に立ち向かい勝利する。この話しをシングルマザー刑事の息子デヴィッドにするマイクは、暗闇では寝付けない少年に勇気とは何かを教える。パレスチナの谷、ユダヤ人とぺリシテ人(パレスチナ人)、この原題が意味する例えは色々考えられ、とても深い。邦題『告発のとき』では裁判映画と間違われても仕方がなく、このすばらしい作品の印象を薄めているのは誠に残念である。(Ryu)

(制作国)アメリカ

(日本公開)2008年6月

(上映時間)121分

(制作・脚本・監督)ポール・ハギス


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著者紹介

近藤 龍 ()

総合商社を経て現職。商社時代は、イラン、イラク、マレーシア、シンガポール等に駐在。慶應義塾大学商学部卒業。

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