北欧とフィンランド、それぞれの個性(北欧シリーズその1)
私が北欧に触れたのは幼少の頃、本を通してでした。デンマークの作家アンデルセンの作品が大好きで、メルヘン的でありながらどこかもの悲しさもある、おとぎ話なのに主人公たちはそれぞれ悩みを抱えている、今思えば北欧という場所を象徴しているようにも感じます。 それから大学で北欧研究のサークルに所属し、実際に北欧を旅行し、そののちに何年か仕事で住むようになり、帰国後も北欧の人々と接するようになって実感しているのは、一緒くたに北欧、としているけれど、違う、けれども似ているところもある、ということでした。これは日本が韓国や中国と違うと感じていても、アジア、とひとくくりにされることに対して抱く違和感と似ていると思います。 それぞれの国民性を象徴するものとして、こんな例えがあります。「北欧の人々が良い製品を出すには、フィンランド人がデザインし、スウェーデン人が製品とし、デンマーク人が販売し、ノルウェー人が批評するのが良い。そしてアイスランド人は、外界で売れなかったとしてもその商品名にアイスランド語を付けようとする。」 得意どころがそれぞれ違うけれども、団結して素晴らしいものを作り出す、いわゆる「みんな違って、みんないい」を地でいく北欧の人々にそれぞれ当てはまる登場人物が出てくる文学作品があります。フィンランドの作家 トーべ・ヤンソンによる「ムーミン」です。 デザインするのはアイディアにあふれたムーミンパパ、製品にするのは発明家のフレデリクソン、販売するのは商売っ気のあるスニフ、批評をするのはシビアにものごとを指摘してくるちびのミィ、商品名に自国の言葉を付けようとするのはこだわりの強いヘムレンさんといった具合でしょうか。 多様なキャラクターと強烈な個々の個性。これがムーミン作品の魅力の1つでもあります。 そしてなぜ私がフィンランドに惹かれたのか。これも北欧の個々の個性の中できらっと光るものを自分にとって見つけたからだと思います。 面積が日本とさほど変わらないのに、人口は500万程度。フィンランド全国民を合わせても東京都の人口にも及びません。それでいて、世界に打って出る力もあります。携帯電話のノキア、カラフルなデザインが特徴のマリメッコ、カンヌ映画祭でグランプリを獲ったこともあるカウリスマキ監督、いまや私たちの身近で使われている単語「サウナ」もフィンランド語でフィンランド発祥です。 特に教育の分野で、OECDによる学習到達度調査(PISA)において2003年、2006年と世界1位となったことが、私が2007年からフィンランドへ渡った決め手となりました。 日本より授業数が少ないのに、どうしてそんなに学力が高いのか? …それをこれからご紹介していきたいと思います。
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