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御成門新報公式サイトオープン

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近代から現代に至るまで、人類社会の発展を支えてきたのは科学技術の発展でしたが、その基礎は 17世紀にデカルト•ニュートンによって確立された近代合理主義に立脚した近代科学の上に基づいています。それは「機械的世界観」と「要素還元主義」を柱とする思考の枠組み(以下パラダイム)で成立している学問です。機械的世界観とは「世界がいかに複雑に見えようとも結局は一つの巨大な機械である」という捉え方を指します。要素還元主義とは「人間が何かを認識する時にその対象を単純な部分の要素に分類•分割し、その分類した要素を詳しく調べ、問題があればその部分を修復し再び元の形に戻せば良い」という捉え方です。この2つのパラダイムは世界が農業化から工業化へ変化していく中で「無ければ造るしつくれば売れる」という状況の中、恐るべき切れ味をみせました。

 ところが、この 2つのパラダイムは今、息切れを起こしています。それは機械的世界観においては「全体を部分に分割する都度、全体に内に含まれる大事な何かが失われていく」、要素還元主義においては「重要でないと考えられる要素は捨て去っていく事にならざるを得ず、何が重要で何が重要でないかの判断は当事者が所有する思考の枠組みによって独断的に決められてしまう」という各々の限界点が見え始めているからなのです。つまりこれらは 2項対立の思考、分離分割の思考とも言え、主観と客観や全体と部分をそれぞれ対照的に分析的に捉えてその反対の一方を捨て去るという思考形式では現代事象が捉えられなくなってきた事を指すのです。

 しかし、よく考えてみるとみるとこれらのパラダイムは近代に発生したものです。そしてその近代のパラダイムという眼鏡をかけて現代を理解する事自体に無理があるのではと私たちは考えました。

 そこで私たちは かつての偉大な先人達のように、メディア運営を通して現代にふさわしいパラダイムを「独立不覊、不偏不党、官民調和」に基き、知足利他の視座で読者の皆様と創成していきたいと考えるに至ったのです。
御成門新報は読者と共に現代そして未来へのパラダイムを紡いでいくオープンエンドのインターネットメディアを目指し歩んで参りたいと考えています。

「法の支配」の幻想について1

安倍首相による「法の支配」の強調


安倍首相は、5月30日のシンガポールで開かれたアジア安全保障会議(シャングリラ対話)における講演で「海における法の支配」の重要性を強調、続いて


6月4日に開かれた先進7か国首脳会議(G7)でも東南アジア情勢について「力による現状変更は認められない」という強いメッセージを出し、「法の支配」の順守を要請した。


「法の支配」とは、もともとヨーロッパ中世の法概念に由来し、英米法の伝統とされる「人の支配でなく法の支配を」とか「王の支配ではなく、法の支配を」という原則をいうものであるが、国際関係においては国家間の紛争を力によらず、国際法の原則に従って解決しようという外交政策として主張されているようである。


このような国際関係における「法の支配」の強調には、既に第一次安倍内閣時代から自民党議員や外務省関係者により外交政策の基本として唱えられるようになった「価値観外交」の理念として、「自由、民主主義、基本的人権、法の支配、市場経済」が普遍的価値として挙げられるようになったという、歴史的背景がみられる。


このように「自由、民主主義、基本的人権、法の支配、市場経済」と並べられると、今の日本国ではどれもこれも殆んど争いのない基本的価値として受け取られそうである。昨今の国際情勢を前提すると、我が国はこのような基本的理念の上に成り立っている民主的社会であり、これに対し北朝鮮、中国、ロシア、モスレム諸国などは、この様な価値観を脅かす外交政策をとっており、我が国の安全を守るためにはこのような基本価値を強調することには、あまり異論はなさそうである。


「法の支配」の理念がもともと、国内での専制君主の恣意的支配に対し、「法の支配」を対峙するものであるのに対し、国際関係においてはこれらの基本価値を否定するような「ならずもの国家」(rogue state)の外交政策に対抗するために、問題の「法」による解決を提唱するものとして異論の余地がないということになりそうである。


「法の支配」の「法」とは?


だが、「法」による問題の解決という場合、その解決のために適用さるべき「法」とは何かが、実は大問題である。


この大問題の第一は、安倍内閣が取り組もうとしている現在の国際関係においては、世界の国々の間で認められる「法」とは何かという基本問題である。国際関係における「法」とは、当然国連を含む様々の国際機関が決定する国際条約等の取極めや、個々の国同士が相互に締結する条約などであるが、この中でも最も普遍的だと考えられる国連の条約でさえ、全ての国連加盟国がそう簡単に順守するものでもなく、「法」としての強行性にはかなり疑わしいものが多数あるからである。


このことは、尖閣や竹島をめぐる中国と韓国の動き、最近の南アジア海域における中国の行動や、ウクライナにおけるロシアの行動からみても、領土に関する国際法規の解釈・適用が一筋縄でないことからも容易に理解される筈である。いみじくも「価値観外交」という言葉自体が示すように、その政策としての有効性は政策が向けられる相手方が、多かれ少なかれ当方の価値観を共有するという大前提が欠ける限り、その有効性はかなり疑わしいものと言わねばならない。


問題の第二は、実は国際関係のみならず、国内における法の適用についてさえも、「法の支配」における「法」とは何かは、これまたそう簡単ではなく、「法」といっても全てが条文化された成文法に限られず、判例法や慣習法、場合によっては条理といった不文法と呼ばれるものもあり、また実際の「法」の適用については法の意味を確定するための法の解釈というものがあり、同じ条文でも解釈によって著しく意味が変わってしまうという問題がある。


次回以降では、国の内外における「法の支配」と「法」そのものの問題性を追求して行くこととするが、法学者や裁判官、弁護士、検察官などの法曹関係者、さらに法の制定と施行に関わる官僚、政治家など、法に関わりの深い人々(法の玄人)と、法に拘束され、これに従わざるを得ない一般人(法の素人)との間には、それこそ「深くて、暗い谷」があり、法の素人は法の玄人のいうことを丸呑みにして信じざるを得ないことになっている。


世の中には法の玄人以外にも、様々の分野の専門家=玄人がいるが、法の玄人が厄介なのは彼らが専門とする「法」というものが「正義」を体現するとされていることにある。この法=正義という方程式によって、法の玄人は「正義の味方」という印籠を手にして素人を平伏させることになり易い。素人は兎角悲しいかな、法の玄人が水戸黄門なのか、印籠を持った「護摩の灰」に過ぎないかかを見分ける術をもたないことが通常である。


筆者は、1953年に大学を出てから2000年に大学を定年で退職するまで法学者、それ以後弁護士として法律実務に携わり、またこの間役所の審議会や外郭団体の仕事に携わってきた。


次回以降、この60年余に亘る法の世界における経験から学んできた知見に基づいて、法の素人が陥り易い「法」に対する幻想を少しでも打破することできれば望外の幸いである。


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著者紹介

花見 忠 (はなみ ただし)

松尾綜合法律事務所客員弁護士。東京大学法学部法学博士、ケルン大学法学部、コーネル大学法学部、 カリフォルニア大学バークレー校留学。上智大学法学部教授、ルーバン•カソリック大学法学部客員教授、ハーバード大学ロースクール客員教授など歴任。政府関係の役職としては中労委会長、内閣官房参与等

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